【映画レビュー】「長いお別れ」見事な山﨑努の演技と介護の現実
認知症になると
認知症になると周りの家族などはまず狼狽する。
場合によったら、その意味不明な行動に怒りを覚える時すらある。
そういう葛藤を経て、認知症になってしまった家族を受け入れていく。
そういう家族の様子を描いた映画だった。
その中で圧巻だったのは、山﨑努の演技である。
だんだんに記憶をなくしていく、混沌とした意識の中に沈んでいくかのような様子をよく表していたように思う。
そして、何より口もとだけ見ても面白いのである。
口もとだけでも感情や認知症の進み具合がわかるのである。
きっと患者さんなどをよく観察したり、本や映像などで調べたりして研究されたのかもしれない。
それを見るだけでも価値のある映画かもしれない。
認知症は人それぞれ
認知症の症状は人それぞれである。
私の母も認知症であり、私のことを妹であるおばさんと間違えたり、忘れていたりする。
問題はそれに伴って起きる出来事である。
例えば徘徊。
映画でも触れられていたが、きっと家族の苦労はあんなものではない。
また、筋力の低下による転倒。
突然全てが一気にのしかかってくる。
認知症自体は「長いお別れ」なのではあるが、体の機能の低下はあっという間である。
医者の話を聞くには
医者がさらりと説明することが、実は結構シビアな問題だったりすることがある。
人工呼吸器をつけるか。
胃瘻にするか。
人工肛門をつけるか。
場合によったらその選択で命が延びても、入院したきりになったり、ご飯は今までのように食べられず、チューブでの導入になったりする。
その辺の展開があまく、あまり描かれていなかったのが残念だった。
家族が悩むのはその辺の判断であり、さらにはその判断は当事者の家族以外の親戚による非難や意見に晒されることになる。
こういう問題もしっかりと描いてほしかったと思う。
なんとなくよかったね、家族がいいね、という話で済まなくなっているのが今の介護の現場なのではないだろうか。