Climate Reality Project 「24時間リアリティ」行動デー 報告3
報告3回目。
今回は日本版グリーンニューディールについて、経産省が当日出した資料とともに見ていきたい。
そのため発言の時系列と資料は順序が変わる。
ご了承いただきたい。
これまでの経緯
1回目は会議前、2回目は気候危機の現状についてダイジェストした。
経産省資源エネルギー庁の資料から見る日本のやる気
以下の資料は当日配られた経産省の資料の一部である。
2030年の目標(二酸化炭素排出26%削減)を達成するための試算である。
いわゆる「3E+S」である。
3E
+S Safty(安全性)
これはグリーンニューディールにも出てくるので頭のすみに置いておいてほしい。
上の丸の所を見てほしい。
この資料は一次エネルギーの割合である。
よく見ると、2018年度原子力が3%から2030年には11~10%と7~8%増加している。
しかも、全体の76%が化石燃料と18年度から約10%しか減少していない。
以上は1次エネルギーである。
まだ電力になる前の原油や天然ガスそのものや、風、日光などの段階と思っていただければ良いだろう。
下の方の電源構成図(こちらは1次次エネルギーを電力に変えたとき)を見ると効率の良い原子力が18年度が6%から30年度には22~20%と激増。
再エネは効率が悪いため、18年度17%から30年度には22~24%におさえられている。
効率が悪いとは言え、これでは確かに電気の安定供給に不安が残るのでは、と思わせるグラフとなっている。
しかし、よく見ていただきたいのはそのとなりの右下の赤丸内。
30年度の再エネの電源構成である。
よく見ると、水力約9%、太陽光7%、風力1.7%バイオマス約4%、地熱約1%となっている。本当にこの試算でいいのだろうか。
太陽光、風力についても開発は進められており、コストはどんどん下がっていることも以前のリポートでまとめたところだ。
さらに言えば 、原子力は今なお続く福島の廃炉の例を見ても分かるとおり、最終的なコストがいくらになるかも分からないような代物である。
処分法がまだ見つからないいわゆる「トイレのないマンション」なのである。
そんなものを大量に作って将来世代に残していくことが果たして気候危機に対応するものだと胸をはって言えるのだろうか。
政府の対策を実施し始めた今の段階で、まだCO2の削減は8%にとどまっている。石炭火力を減らすということも積極的な打開策も提示されていない。
このことから見ても、本気でCO2削減に取り組もうとしているようには見えない。
明らかな日本の遅れ
平田仁子氏(気候ネットワーク国際ディレクター)から気温上昇を1.5℃におさえるには今行動強化しなくては間に合わなくなる可能性があることが示唆された。
しかも、世界は2050年にはCO2排出NET0を目指している。
26%は決して十分な目標とは言えず、世界からは目標の引き上げをするように促されているのである。
しかも、目下15基の石炭火力発電所の建設が進行中であると指摘。
これは気候変動対策と全く逆行しており、このような状態の日本が国連やCOPで何を言おうとも相手にされないのは仕方のないことだという。
しかも、この石炭火力への投資は座礁することが目に見えている。
再エネのコストが急激に下がり続ける中、CO2対策や大気汚染対策を施した火力発電所は高コストになり、今すでに建設が頓挫しているところもあるという。
こうしたことから、平田氏は日本の国際的役割を次のように考える。
- 公的資金の拡大(民間資金の呼び水として)
- 途上国の脱炭素化支援:エネルギーインフラ輸出方針転換
- 再エネ・省エネを中心にした技術支援と国際展開
そして、今のままでは対策は不十分とし、早期の見直しをせまった。
日本版グリーンニューディール
グリーンニューディールはオバマ政権時代に使われ始めた言葉で、エネルギー転換のための経済政策を指す。
そこで使用されているエネルギー政策が3E+Sという概念である。
これを頭に入れた上で以下の提案を読んでいただけるとわかりやすいと思う。
3E+Sについてははじめのほうで述べた。
今回、登壇した東北大教授明日香壽川氏は
「原発ゼロ・エネルギー転換戦略」
とのエネルギー・経済政策を打ち出した。
この案は明日香壽川氏を中心とした研究者のグループによって練られたものである。
以下のリンクからダウンロードが可能であるため興味のある方は参考にしていただきたい。
この案によれば、原発をゼロにした上でさらに再生可能エネルギーで発電電量の40%をまかなえるという。
これは根拠なく言っているのではなく、経産省のデータや、業界の予測によって計算されているものだ。
リンク先の資料には、さらに解説がつけられている。
エネルギー転換戦略(上図対策シナリオ)によって、2030 年に再エネ 44%、脱石炭脱石油、電力消費 30%削減(2010 年比)が可能となる。また、2050 年には、再エネ 100%、電力消費 40%削減が可能となる。なお、発電は概数であり、再エネ 100%の場合は需給調整などで多めに発電する必要がある。詳細は、本稿の資料編を参照のこと。*1
この表から見て、保守的に見積もっても、太陽光、風力はもっと伸びる余地があるとみて良い。
さらに経済的効果として、化石燃料の輸入量は削減、対施設投資額も減る。
減ったお金を雇用に回せば、新しいシステムができることにより雇用を増やすことができる。
こうして「再エネ=経済縮小」の構図は崩すことができる。
これが日本版グリーンニューディールである。
次回は日本での取り組みについて紹介し、今回のリポートをまとめようと思う。
*1:
出典:ETFFJP HOME「原発ゼロ・エネルギー転換戦略」図5と解説 強調は筆者