未来のコンパス

教育、環境問題についての思いや学びについて綴ります。

安心をくれたのは母だった

母は特別養護老人ホームに入っている

もう何年もお世話になっているのだが

旅先で突然、母の心拍数が低下していると

直接世話をしてくれている妹から

連絡を受けた

f:id:saho-tamura:20230921152715j:image

今のところ体調の悪さを訴えたり

生活に変化があるわけではないのだが

なるべく早くペースメーカーをつけるかどうか

判断してほしいと言われたとのことだった

 

母は以前から延命処置はしないでほしいと

話していたから私たち子どもとしても

ペースメーカーはつけない方向でいくことに

なるだろうとは思ったが

いざ決めるとなると

やはりスパッとわりきれるものじゃない

f:id:saho-tamura:20230921152841j:image

私自身よりも直接世話をしてくれている

妹の方がダメージは大きいだろうから

妹の意見を尊重したいと思った

 

結局、認知症がかなり進み

普段会話もままならない母ではあるが

一応本人に話をしたいということを

いつも世話してくれている妹が決め

手はずも整えてくれた

 

そして何気ない普段の面会から始め

いよいよペースメーカーの手術の話を

施設の看護師さん交えてし始めた

どうやら昨日施設の担当医と母は

話したらしいのだが全く記憶がない

f:id:saho-tamura:20230921152939j:image

それは想定内だったから驚かない

驚いたのは母で、ええ?って顔をした

「心臓が弱っているんだよ」

「手術して機械をつけるか」

「このまま様子を見るか」

「どうする?」

「手術すると痛いかもしれないけど

 長く生きるかもしれない」

「手術しないと今まで通りだけど弱ってるよ」

などとメリット、デメリットを

やんわりと伝えると

しばらく悩んでいるのか

わからなかったのか

じっとしたり手をさすったりのびをしたり

なんともいえない表情をしていた

しかししばらく下を向いて

そして勢いをつけてこう言った

「やめたいな」

それできまりだった

f:id:saho-tamura:20230921153131j:image

念をおそうとしたけど考えてみたら

自分の生き死にのことで

思いっきり返事したのだ

それは酷だからやめた

「わかったよ」

じゃあ、そうしようということで

延命のためのペースメーカーは

しないことにきめた

決めたら涙があとからあとから出て

止まらなくなってしまった

f:id:saho-tamura:20230921153347j:image

私と妹は自分たちでは決められなかった

認知症になってなんだかふわふわとしている

雲の中にいるかのような母

一瞬だけもとの母が戻って

きめてくれたのだった

 

帰り際に手を伸ばしてきて

アクリル板越しに指先にタッチした

温かかった

コロナが始まってからはノータッチなのだ

f:id:saho-tamura:20230921153526j:image

ハグなんてできるはずもなく

なんとなく物足りなさを感じていたのが

やはりふれあえないことの寂しさなんだと

ひしひしと押し寄せてきた

 

帰る時には母はもういつも通り認知症

私たちのこともよくわからずに手を振った

でも元気に手を振って別れた

じゃあね、バイバイ!