宇宙が見えたとき
はてなインターネット文学賞「記憶に残っている、あの日」
泳げないわたし
高校生だったわたしはまだ泳げず、夏休みのプールで、プカリと浮かんでおりました。
自由時間だったと思います。
ぼんやりと空を眺めながら、何も考えずに空を見ておりました。
だんだんと心は空に向かっていき、心の中はますます空っぽになりました。
宇宙
その時、ふっと目の前が暗くなりました。
何もかも忘れて浮かんでいたわたしの目の前にあったのは、真っ暗な空間。
それと星々でした。
漆黒というよりは濃紺に近かったでしょうか。
全く時間の感覚がなくなりました。
何も聞こえなくなりました。
そこにあったのはその空間だけでした。
刹那のできごと
驚いて気がつけば、まわりには同級生たちが思い思いに楽しんでおり、普段通りのプール。
わたしがどこかへ行っていたことも、何かおかしなことが起きたことも、微塵も感じません。
時間にすればほんの数秒だったのかもしれません。
見えたのは空ではなく、宇宙でした。
宇宙になる
心が空っぽになればまた見られるかもしれない。
そう思って、何度か瞑想したり、プールに浮かんでみたりしました。
けれど、同じことは起こりませんでした。
一生に一度の宇宙との一体感だったのかもしれません。
でも、あの感覚は忘れがたく、これからもあの瞬間を味わおうと瞑想を続けています。