世界が変わった瞬間
はてなインターネット文学賞「記憶に残っている、あの日」
人が一人増えること
赤ちゃんが産まれた瞬間、世界がぐるりと回った気がした。
あっ、世界が変わった、そう思いました。
世界に一人、人が増える。
それはそれは大変な変化でした。
お腹の中にいた子どもが、曲がりなりにも一つの個体として生まれ出てくる。
これはやはり大きな出来事かもしれません。
でも、そういう事実より、感覚として、地球がぐるりと回転したように感じたのです。
お腹にいた時
赤ちゃんがおなかにいた時、はじめはピンときませんでした。
おなかの中で動くようになってからも、なんだか蛇のようなものがぐりぐりと動いているようにしか感じられませんでした。
だんだん大きくなるにつれて、生きているんだなぁ、ということがわかり始めました。
臨月
臨月になると、かかとの形がお腹に見える時もありました。
そしてはじめてのお産の緊張からか、怖い夢も見ました。
ひきだしの暗い穴から、魔女がおなかの中の赤ちゃんを連れていこうとしていました。
わたしは「連れていかないで」と叫んで泣きながら目が覚めました。
しばらくして、陣痛のようなものが来ました。
一度入院しましたが、お産に至らず、一度退院。
その三日くらい後、いよいよ陣痛。
なかなか進まず。
はじめての経験だらけ。
あれよあれよという間に、さまざまな処置がなされ、産まれてきてくれました。
世界が変わる
赤ちゃんが産まれてからは生活が一変しました。
お産の時に感じたのとは違う意味で、世界が変わりました。
今はこの変わった世界がわたしの世界です。