【映画レビュー】「サウンド・オブ・ミュージック」Sound of Music ②
前半は子どもたちの成長について書いた。
後半は歴史に焦点を当てたい。
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- 出版社/メーカー: 20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
- 発売日: 2018/10/17
- メディア: DVD
色濃くなるナチスの影
一番上の女の子リーズルの好きな男の子、ロルフは実はヒトラーユーゲントに入っている。
それは、大佐に見つかった時に思わず、ヒトラーへの敬礼をしたことから分かる。
大佐が歌うあまりにも有名な「エーデルワイス」の歌も、実はナチスに対する祖国を讃える歌だ。
これは後半、音楽祭でも歌われるところで特によくわかるだろう。
そして、周りにもナチスの影が。
自宅で、再婚相手にするつもりだった男爵夫人を紹介するパーティーで、オーストリア国旗に嫌悪感を示す輩がいる。
そこではすでに大佐がナチスから睨まれていることを示している。
最終的に、一家はオーストリアから脱出し、アメリカへ渡るのである。
オーストリアの事情
ここで少し物語を離れて、当時のオーストリアの状況を見てみよう。
オーストリアは1867年にはオーストリア=ハンガリー帝国になる。
1800何代後半からは帝国主義が盛んになり、フランスでは、ナポレオン3世が、様々な国に対して出兵している。
同時に、ドイツではプロイセンが誕生した。
プロイセンも鉄血宰相ビスマルクが有名なように、フランス、オーストリアを破り、それまで分裂していたドイツを統一し、強いドイツ帝国を作る。
帝国主義の全盛期である。
この後第1次大戦に突入する。
「サウンドオブミュージック」の時代では第1次大戦に敗れ、共和国となったオーストリアである。
年譜
以降年ごとに追っていくと次のようになる。
大戦後のベルサイユ体制により、オーストリア=ハンガリー帝国は解体、オーストリアは共和国に。
ドイツも共和国となったが、インフレにより苦しむ中で、その不満を吸い上げる形でナチスが台頭。
- 1936年、日本では2.26事件。
- 1936年、日独防共協定。
- 1937年、イタリアも加わり、三国防共協定。
- 1938年、ドイツがオーストリアを併合する。
この1937~8年が、サウンドオブミュージックの時代である。
息詰まる逃避行
マリアと大佐がハネムーンに行っている間に、この併合が行われ、2人は急ぎ帰ってきたのである。
同時に、大佐にはベルリンから招集令状が届く。
それを嫌い、地方長官の目をくぐり抜けて、なんとかスイスへと逃亡するのが物語の後半である。
映画の背景を知ろう
映画の背景を知ることでより深く映画を楽しめる。
場合によると、突っ込みどころ満載の映画もあるので、そのチェックも楽しい。
歴史を知ること、それぞれの国のことについて知ることで楽しめる範囲が広がる。
参考 岡崎勝世 鈴木菫 並木頼寿監修『パワーアップ 世界史資料 初訂版』帝国書院