【映画レビュー】「家族を想うとき」Sorry We Missed You
高まる期待
遅ればせながらようやく観てくることができた。
ケン・ローチ監督の最新作、Sorry We Missed You 「家族を想うとき」
新宿武蔵野館での鑑賞。
館内の一角にはメッセージを貼るコーナーが設けられ、たくさんのメッセージで埋め尽くされている。
映画を見る前にざっと目を通す。
著名人のレビューも一緒に貼られている。
などなど。
原題に込められた意味
原題のSorry 〜は日本で言うところの宅配業者の不在者伝票、「ご不在でした」だ。
この題名がエンディングに大きく関わっている。
そのため、原題直訳でも良いのでは、と思う。
この意味を知った上でエンディングを見ると、やるせない気持ちになる。
日本語題のようなセンチメンタリズムに陥る隙は全くない。
ケン・ローチの作品は3作くらい観たが、どれも「えっ、ここで終わるの⁉︎」という終わり方。
オープンエンドなのか、バッドエンドなのか見方は分かれるだろうが、観る者に思考を促している。
社会問題を遠ざけないで
ケン・ローチの映画は、映画に娯楽性のみを求める人には薦めない。
しかし、「この社会なんかおかしいんだけど何がおかしいのかわかんない」という人や、「社会問題について手っ取り早く知りたい」という人は見ておくべきだ。
またはこの社会には問題なんかないなんて思っている人がいるとは思えないが、もしいるようだったら観るべきだ。
目をそらしたくなるが、そらしてはならない。
全力で社会の暗部を描いているから。
そしてそれは誰にでも起こりうることであるから。
大きな社会(コミュニティ)の腐食が1番小さくて一番大切なコミュニティである家族を蝕んでいる。
家族を幸せにするために働いていたはずなのになぜ家族を犠牲にして働くのか。
「ならやめれば良いじゃないか」「他にも仕事はあるだろう」という言葉がわれわれ自身を追い詰める。
効率主義の罠がそこにはある。
少なくともワンクリックの向こう側を考えて行動するようになる。