【映画レビュー】「12か月の未来図」
教育の格差=貧富の格差
この映画はドキュメンタリーかと思っていたら、ドラマだった。
しかし、かなり現実に即していると思われる。
舞台はパリである。
フランスでも格差は広がっており、それは子どもたちのも影響を与えずにはおかない。
主人公は名門高校のフランス語の教師である。
ある出来事をきっかけに、周辺の貧困地域の中学校へ1年だけの異動。
「周辺校にベテランを!」という教育省のスローガンが正しいことを証明しにいくという設定である。
そして、そのあまりの違いに戸惑うところから物語は始まる。
教育はだれのため?
教育はもちろん子どもたちのためにある。
子どもたちを社会に適応できるようにするためにあるのでもない。
だから、静かに座っていることを求めるのではなく、知的関心を喚起し、学習に向かわせるのは教師の力量である。
そのために、教師は様々なことを知っている必要があるし、インスピレーションを得るために同僚と話したり、自分の知見をさらに広げていく必要がある。
型にはまった授業がつまらないのは洋の東西を問わず、同じようである。
主役の教師は徐々に子ども達の様子を観察し、興味を引くような課題設定ができるようになるのである。
教育の醍醐味
これは、教師が教師としての仕事を取り戻していく過程にも見える。
ただひたすら教え込み、けなしてばかりいた教師が成長していくのである。
ここには子どもも育ち、それとともに教師も育つ環境がある。
教師の問いがあり子どもたちの反応がある。
子どもたちどうしで反応し合い、化学変化を起こす。
これが教育の醍醐味である。
人と人との営みの面白さである。