【映画レビュー】「海よりもまだ深く」是枝作品・阿部寛のダメ男っぷりが目にしみる
是枝監督のテーマ・家族
家族をテーマとした作品を手がけている是枝監督の作品の一つ。
今回は別れても、なお妻子に未練の残るギャンブル好きの男を主人公に、阿部寛が演じている。
父親は他界しており、遺影も名前も出てこないのだが、異様な存在感がある。
父親、主人公、離れて暮らす息子の3人が血のつながりで不思議と似ていくことに、もやもやとしたものが残る映画である。
血のつながっている家族
是枝作品では血のつながりがあるか、ないかなどもテーマの一つとなってくるのだが、今回はこれが一番大きかったように思う。
父親が家庭のことはかえりみず、苦労をかけているところばかりを知っている主人公は父親のようにはなるまいと考えている。
しかし、結果的に父親とそっくりになっており、離婚している。
息子は主人公のようにはなりたくないと言う。
しかし、その夢は「公務員になること」であり、主人公の子供のころにそっくり。
しかも、主人公が子供のころ父親と買った宝くじを一緒に買うことで、同じ轍を踏んでいる。
つまりこの子供が望むまいとし、母親が何とか阻止しようと努力しているにもかかわらず、この子はどうも父親に似てしまいそうなことが見ているものにはわかってしまうのである。
3代を見ているものの悲しみ
父親、主人公、その息子と3人を見てきた人は樹木希林演じる母親である。
そして、この3人を見続け、だらしがないと言いながらも愛している。
そのため、「どうしてこうなっちゃったのかしらねぇ。」と言って涙を流すのである。
血のつながりだけではうまくいかない家族。
血のつながりがあるからこそ、難しいのかもしれない。
家族は他人の始まりとも言うが、近い分こじれたら大変なのである。
家族だからこそ気を遣わなくてはいけないことも多いだろう。
家族といる時間が多くなっている今だからこそ考えたい問題である。