未来のコンパス

教育、環境問題についての思いや学びについて綴ります。

【教育は未来への投資】なぜ学校は学ばないのか

 

Covid19による学校のあり方への疑義

Covid 19による一斉休校で、教員が普段の働き方のおかしさとどこが無駄なのか気づいてきた。

特に中学校、高校では勤務時間外にほとんどの活動が行われる部活動について、賛否が分かれている。

しかし、教員の働き方改革をし、週45時間に時間外労働をとどめるとした文科省の言葉を真に受けるならば、部活動はほぼ不可能である。

できるとすれば、週2~3日、1時間程度であろうか。

また、卒業式の練習やその他行事の削減や縮小についても検討され、縮小、削減可能なことがこの3ヶ月の休校期間で明らかになっている。

寝ているきつね

しかし、休校措置の解除を受けて、学校を元のブラック企業に戻そうとする動きが活発になっている。

なぜ学校はこの休校期間中の出来事に何も学ばなかったのだろうか。

 

学習の保障とはいうものの

各学校では学習の保障をすべく懸命に授業時数を確保している。

土曜日、夏休みの短縮など、自治体によって取り組みは様々であるが、懸命に時数を確保することに努めていることはニュースから伝わってくる。

しかし、果たして今のやり方はどうなのだろうか。

文科省からは過剰な土曜授業や夏休みの削減について配慮するとしている。

www.at-s.com

www.hokkaido-np.co.jp

 

教員の負担は増大するばかり

土曜授業、夏休みの削減もあり、教員も子どもも体力的にきつくなるだろう。

なお、教員は土曜日は通常は休みのため、振り替えを取ることが必要である。

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しかし、これに対して文科大臣は次のように述べた。

やっぱりいざ何かあればですね、前国会では働き方改革で、先生方の働き方、少し変えていかなきゃいけないよね、時間で少し見て今までのようなオーバーワークは無くしていこうねって言ったのですけど、やっぱりこういざとなればですね、本当に頑張ってもらわなきゃならないのが学校の先生だと思っていますし、先生方もその思いを持って現場で取り組んでいます。私のところに、土曜授業や夏休みの短縮でクレームなどを送ってくる教員というのは皆無です。」

萩生田光一文部科学大臣記者会見録(令和2年6月19日):文部科学省

もちろん教員は頑張っている。

子どもも頑張っている。

しかし、夏休みが短縮された今、最長で1ヶ月、聞いた中でも短くて1週間の夏休み期間だ。

誰もいない海 デッキチェア かもめ

この中でどのように振り替えをとれというのだろうか。

普段の時間外勤務の分だけでも消化しきれないだろう。

子どもも疲れが増し、熱中症のリスクが高くなる。

学校へ行きたくなくなる子も増えるだろう。

 

子どもも教員も体力的に大丈夫なのか

埼玉県でも、少しずつに登校日を増やしたり、時数を増やしたりしている。

配慮がされているように見えるが、実際はどうだろうか。

子どもたちは3ヶ月外出自粛を迫られ、極力うちにいた。

つまり入院していた患者のように、限られた範囲でしか動かなかったのである。

1ヶ月の入院から突然職場に戻ったことのある方はわかると思うが、慣らし期間はかなり必要である。

個人差はあると思うが、元に戻るのに3ヶ月ほどかかるのではないだろうか。

それが、3ヶ月の休みの後、1ヶ月で元に戻すのである。

びょうんのベッド

しかも、部活動まで再開される。

この部活動再開については、首を傾げざるを得ない。

本分である授業では話し合い活動や合唱、密になる運動は避ける、とされているにもかかわらず、かなり密になる部活はOKなのである。

本業の学習はおろそかにされているであろうことは上のツイートを見れば推測できることである。

学習活動や部活動に関して文科省からは以下のような通知が出されている。

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その一方での文科大臣の発言

しかし、上で見たように、文科省は一定の身体的距離を置くようにして活動をするとしながらも、文科大臣の発言との食い違いが目立っている。

2020年5月22日の萩生田文科大臣は会見で次のように述べている。

「私としては、地方大会の開催に向けて、部活動に熱い思いを抱く生徒の皆さんの希望を十分に汲み取りながら、各地域において検討を進めていただきたいと考えており、文部科学省としても、関係団体と連携協力してまいりたいと思います。」

萩生田光一文部科学大臣記者会見録(令和2年5月22日):文部科学省

これは部活動を再開し、推進することについてお墨付きを与えたにも等しいだろう。

2020年6月5日には次のような発言もある。

日本陸連の皆さんが、やっぱり同じ思いでですね、我々のインターハイに代わる大会をという要望を受けていただいて、中学生の全国大会に類するもの、高校生の全国大会に類するものを、それぞれ横浜、広島で開催すると発表があったことは承知していますし、またその日本陸連の取組には、高く評価をしたいと思います。」

萩生田光一文部科学大臣記者会見録(令和2年6月5日):文部科学省

これは部活動の再開と大会開催を促しているようにしか見えない。

しかも、3ヶ月練習も体を動かすことができなかった子もおり、体調が整わない中で行われる。

もちろん優先すべきは学習である。

学習の遅れを取り戻すだけで、今までと違ったストレスと体力的な衰えからくる疲労による体調不良が多発するのは目に見えている。

それは教員も子どももである。

子どもは思っているよりも友達の目や教員の目を気にしている。

受験のためや他の人に嫌な思いをかけないようにするために一緒に部活動に参加する場合もあるだろう。

教員は、授業の穴を開けるとあとが大変になるし、他の職員に迷惑をかけないようにするため、休まないようにしようとするバイアスが働く。

教員がこの1年もつのか心配である。

 

受験生の学びの保障は

部活動については、他にもある。1〜2年はともかく、3年生は受験を控え、授業も十分でない中、行う必要性を感じない。

部活動をするくらいなら、授業をしたり、家庭学習をしたりする時間にあて、学習時間を確保すべきだ。

部活動を始めるのは1〜2年生が2学期ごろからで十分ではないか、というのが私の考えである。

対外的な試合もなく、体慣らしも十分でない中、暑さにさらされながらの部活動は熱中症の危険も高くなる。

青空の中照りつける太陽

中学校、高校の校長、都道府県教委、文科省はそれがわかっているのだろうか。

「やりたい」というのが子どもの意見だとしても子どもの意見をそのままにいきなり全開するのではなく、「体と相談しながらやろう」と提案するのも教育の一つなのではないだろうか。

 

なぜ元に戻りたがるのか

こう考えていくと学校はなぜこうも早急に、以前のままのかたちに戻ろうとするのかと疑問になる。

以前のかたちは働き方に無理があり、改めていこうとしていたところではなかったか。

スポーツの大会がつぶれれば、内申書にひびいたり、スポーツ特待生になろうと頑張っていた子は困るだろう。

しかし、そもそも部活動自体、勤務時間外に行われることの多い、ある種違法な性質を持つ活動となっている。

この期に学校生活から部活動を切り離した方が良いのではないだろうかという声もある。

教員の働き方改革にも子どもの余裕のある時間のためにも行事や部活動を見直すことがこの休校期間にわかったことなのではないだろうか。

changeの札

教育委員会、学校長、文科省はこのことを本当は知っていながら、中体連、高体連高野連、陸連などの団体とのしがらみでやめられずにいるのではないだろうか。

見てきたように、文科省と文科大臣との齟齬、それに対して指示を待つばかりの教育委員会、周りの団体に忖度して様子を見続ける管理職。

それらによって教育は変わるきっかけを無駄にしようとしている。

これが学ばない学校の理由ではないだろうか。

この体質をこそ何とかすべきである。