【生を考える】『熱源』をよんで考える同化政策
2020年第162回直木賞受賞作
『熱源』を読んだ。
- 価格: 2035 円
- 楽天で詳細を見る
前から気になってはいたアイヌ文化。
2019年4月にアイヌ新法が成立し、ますます興味は沸き立っていたところだった。
詳しい話は知らなかったのだが、アイヌのことを題材に書いているという情報だけで興味がわいた本だ。
書店で手に入れてはいたのだが、他の本を読んでいて、なかなか手をつけることができず、このタイミングでの読書となった。
読み始めてからは一気に読みあげた。
同化政策について
日本では樺太とよばれるサハリンにはアイヌだけではなく他の民族も住んでいた。
これは初めて知った。
アイヌの歴史については以下のムックも面白かった。
サハリンはロシア、ソビエト、日本に統治されてきた。
ロシアになったり日本になったり、はたまた分割されたりと入れ替わり立ち替わり統治者が変わり、翻弄されている。
その度にそこに元から住んでいた人たちは翻弄され続けてきた。
自分たちの信じる文明が最良のものであると信じ込んでいる人たちから、アイヌの人たちの文化は未開のもとして蔑まれ、おろそかにされてきた。
帝国主義は自分たちの文化を最良のものとして侵略した土地の人たちに、その独自の文化を捨てさせ、無理矢理自分たちの文化を押しつける。
さらには、言葉でさえも奪い、自分たちの言葉を使用するようにするのが同化政策である。
それはアイヌだけではなく、帝国主義時代の日本が韓国をはじめその他の地域で行ってきたことであるし、帝国主義の他の国々も同様に侵略した先々で行ってきたことである。
こうして自分たちのアイデンティティを無くしてしまいそうになっている民族は他にもあるだろう。
そして、本当になくなってしまったものもあるのではないだろうか。
自分達の文化が最良のものであると思うのは結構だが、それを押しつけるとなると話は変わってくる。
その土地の文化は、そこで生きている人たちが生活していく上で身につけ、生み出していったものであり、それをよりどころとして生きているものである。
文化を、言葉を否定されるということは、人格全部を否定されることだ。
自分の名前すら変えられてしまう。
そんなことは、あってはいけないことだ。
差別は身近なところに
アイヌ新法ができたことで、見直されることになったのは良いことだと思う。
しかし、一度自分の下だと決めつけたものを認めるのが面白くない人たちもいるようで、なかなか差別はなくならないようである。
日本だけで見ても、アイヌ、沖縄、韓国、朝鮮、中国等かつて大日本帝国が蹂躙した地域に対する差別意識の抜けない人たちによるヘイトはつきない。
そんなヘイトを真に受けず、しっかりとした見方を身につけていくためにも歴史の学習は大切だ。
世界史、日本史の学習の高校での比重があまり重くなくなったようで、もう少ししっかり学習した方が良いのではないかと思う。
世界に差別はあふれているが、自分のすぐそばにも差別があることに、明治以降の学習をすれば見えてくる。
知らないし、身の回りにはない、と思い込んでいると案外そばにあるものだ。
まずは知ることから始めてみよう。
そのきっかけとして歴史があり、物語があり、ニュースがある。