【映画レビュー】「アラビアのロレンス」Lawrence of Arabia 世界史年表にもでている「英雄」の末路
アラビアの独立を目指した英雄
ロレンスは第1次大戦ごろにいた実在の人物。
サイクス・ピコ協定が出てくるので、そのころの情勢をロレンスの目を通して見ることができる。
帝国主義で戦争を繰り返し、領土拡大に意欲的だったイギリスの将校がロレンスである。
アラブをねらって送り込まれたロレンスが、逆にアラブを一つにまとめようとし、失敗する様を描く。
西欧ではアラブの英雄としていわれることもあるが、アラブ側からするとイギリスのために闘ったに過ぎないという見方もある。
実際に映画の中でも、どちらにもなじめずにどちらの陣営からも異端のして銀をもたれているシーンが随所で見られる。
結局失敗に終わった
世界史年表などで確認していただければわかるが、このアラブ独立は部族間の覇権争いなどにより分裂し、失敗に終わっている。
その裏では、帝国主義のフランスとイギリスの密約、サイクス・ピコ協定が結ばれ、トルコを分割統治しようと企んでいる。
アラブは利用されたのである。
戦争によるPTSD
ロレンスはアラブの一人となりきって一緒に闘い、アラブを一つにしようと考えるようになっていく。
しかし、その文化のちがいや戦争による残虐行為などにより、徐々に精神的に傷つき、不安定になり、最後には故国へ帰ることを申し出るのである。
その故国でも結局は精神的な傷は癒えず、スピードを出しすぎたバイクによる事故で亡くなる。
その、亡くなるシーンから始まるのがこの作品である。
戦争による被害は様々なところに及ぶことを見ることができる。
色彩の美しさ
この映画で私が最も心惹かれたのが色彩の美しさである。
主人公ロレンスと一緒に闘うアリの衣装の白黒の対比、その衣装が砂漠に映える。
また、戦争のシーンではアリの衣装はその他のアラブの衣装の中に溶け込むのに対し、ロレンスの白は浮き出て異質であることを感じさせる。
また、カイロのイギリス軍基地にもどるシーンでは、あえてアラブの衣装を着続け、イギリスの中でも異質であることを印象づける。
そして心がすさんでいくのに比例して、その衣装の白さも薄汚れていくのである。
心象風景を見事に表した色使いだと言えるだろう。
DVD2枚組と長い作品なのでじっくり見られるときにどうぞ!