【自己肯定感と知的好奇心をもつには】埼玉県学力状況調査の結果から
学校からのおたより
子どもの学校からのおたよりに埼玉県学力状況調査のアンケート結果が出ていた。
内容を見ると
- だれに対しても進んであいさつをすることができていますか
- 学校の授業の予習や復習をしていますか
- 先生の話や友達の発表を聞き、自分の考えを伝えることができていますか
- 難しいことでも失敗をおそれずに挑戦していますか
- 進んで清掃や美化活動に取り組んで学校をきれいにしていますか
- 将来の夢や目標をもっていますか
となっている。
結果については後で触れるとして、この質問項目について考えたい。
1は基本的な生活習慣、2は家庭学習の習慣、3は学習への積極的な態度、4は失敗をおそれない心、5は公共心、6は将来への展望についてを測っている。
埼玉県の学力状況調査報告書*1によれば、この質問は「学習意欲、学習方法及び生活習慣等に関する事項」となっている。
1~6に共通することは、どれも自己肯定感をしっかりともっている子でないとこの問いに「はい」と応えることは難しくなることだ。
自信のない子が
「だれに対しても(知らない人や苦手な人もいるだろう)進んで」あいさつができるだろうか?
自信のない子が
何をしているか、何のためか分からない授業の「予習や復習」をするだろうか?
自信のない子が
先生や友達に対して自分の考えを「伝える」ことができるだろうか?
自信のない子が
「失敗をおそれず」に挑戦できるだろうか?
自信のない子が
「進んで」清掃や美化活動に取り組めるだろうか?
自信のない子が
「将来」の夢や目標について考えることがあるのだろうか?
自己肯定感をもつには
自己肯定感につながるこの一連の質問項目は、私達大人に向けたものとみた方が良い。
私達は直接、間接的に関わる子どもたちが、明るい気持ちでいられる社会を作ってきただろうか。
山田洋次監督の映画『学校』にはさまざまなバックグラウンドを持つ人たちが、夜間中学で学ぶ。
宿題をやってこないけど優しいやつ。
一生懸命に勉強するオモニは、作文は苦手だが、人生経験は豊かで、悩んでいる人に寄り添ってくれる。
学習には全く自信が持てないが、競馬のことは滔々と語ることのできるおじさん。
万能じゃなくていい。
一つでも好きなことがあれば、そこから学習が始まるのだ。
そんな豊かで「一芸に秀でるだけでいい」ことを許す雰囲気があるだろうか?
学校は自己肯定感を高めているか
さて、話を学力状況テストに戻そう。
果たして結果はほぼすべての項目で7割から8割の子どもが「はい」と答えている。
裏をかえせば、2~3割の子どもは自信喪失し、やる気を失ってしまっている状況だということである。
ポイントを上げるために、家庭学習の予定表や家庭学習の手引きを作ったり(これは埼玉県で授業の予復習の率が65.3ポイントと低かったからだろう)、あいさつ運動を実施したり、黙って清掃することを推奨したり、アイクティブラーニングと称して話し合いの時間を多くしたりするといった、学校側の取り組みは効果は薄いということの表れではないのか、ということだ。
「どうして自己肯定感が低いのか?」
そこを考えるべきであり、いかにしてこのポイントを高めるかに腐心すべきではない。
項目には、単純に学級内の雰囲気に左右されるものもあれば、家庭の事情に左右されるものもある。
「こんなに部活をやっていたら勉強なんてする時間はない。」という声も聞かれる。
まあ、時間があったって勉強しないときはしないのだが、それでもある程度飽きてくると「しょうがない、ちょっとやるか。」ということになる。
暇つぶしにちょうどいいのだ、勉強は。
そのくらいのつもりで子どもたちに時間をもっとあげても良いのではないかと思う。
以前、権利としての教育について書いた。
そこで触れたが、国連子どもの権利委員会から日本政府に勧告が出されている。
知的好奇心をはぐくむ
過当競争は勉強をつまらなくする。
ただひたすらマルかバツかのテストや勉強はつまらない。
学習は自分の興味関心が広がったところにしか成立しない。
関心がなければただの苦行である。
しかし、 「知りたい、やりたい、どうすればできるの?もっと、難しいものを!」
と求めることができるのは、それなりに興味をもち知識を累積し始めてからである。
知的好奇心を高めることから学習は始まる。
学習環境の前に
知的好奇心は経験がないとわいてこない。
経験は時間なしに積めない。
様々な体験を自由にできる時間が子ども時代に足りているだろうか。
そして私達大人は、「勉強は?」が口癖になっていないだろうか。
しかし、時には思いっきり遊び、暇をもてあます時間も必要だと肝に銘じておきたい。
ゆったりとした時間を経て自分の興味関心の傾向を知り、自分はこんな点で人とは違い、それでいい、と思えて初めて自己肯定感をもてるようになる。
そしてその先に初めて知的好奇心の芽生えがあるのではないだろうか。