未来のコンパス

教育、環境問題についての思いや学びについて綴ります。

【大学入試制度改革から読み解く】権利としての教育は守られているか

 

国民は教育を受ける権利を持っている

大学入試改革の問題についてようやく問題視されるようになった。

憲法で定められた以下の条文に抵触するのではないかということである。

第二十六条

すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。

2.すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育は、これを無償とする。*1

これは以前から言われていたことである。

萩生田文科省の失言により、ようやく注目されることになった。

この大学入試改革は、前のブログに書いた民間の営利企業が教育に参入することで教育がゆがめられていくことにもつながる大きな一歩である。

 

saho-tamura.hatenablog.com

 

今食い止めなくては今後の子ども達はみんなこの影響を大きく受け続けることになる。

今の受験生だけの問題ではないのである。

この危機感をぜひ多くの方に共有していただきたい。

 

義務教育はどうか

大学入試に隠れ、最近見落とされがちになっているのが、義務教育の無償化である。

日本では無償化とは言え、様々な業者が入り学習用品と称して様々なものを入学時に購入させられる。

学級費も、給食費もPTA会費もあり、月々の支払いもそこそことられる。

また、日本はその歴史から朝鮮、韓国、中国にルーツをもつ子ども達がたくさんいる。

それは子どもたちのせいではなく、国策として行われていることから国の責任である。

100歩譲って自ら望んできた家族の子どもたちだとしても、彼らに無償の義務教育を受けさせる義務を私達大人は持っている

それは日本が遅ればせながらも国連子どもの権利条約」に批准しているからである。

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子どもの権利条約とは

子どもの権利条約」は1989年11月20日第44回国際連合総会において満場一致で採択された。

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しかし、日本がそれを批准するのはその5年後の1994年。

世界で158番目という遅さであった。

これから見ても教育に対する日本の政治的な位置付けは低いとみて良い。

将来を担う子どもたちを育てるのに投資せず、国を富ませようと考えるのは実に浅はかだと言うよりほかないが、それ以上に問題なのは、この条約にも反している恐れがあることを堂々と行っていることだ。

 

すべての子どもが権利を持っている

子どもの権利条約第28条

1締約国は、教育についての児童の権利を認めるものとし、この権利を漸進的にかつ機会の平等を基礎として達成するため、とくに

(a)初等教育を義務的なものとし、すべてのものに対して無償のものとする。

(b)種々の形態の中等教育(一般教育及び職業教育を含む。)の発展を奨励し、すべての児童に対し、これらの中等教育が利用可能であり、かつ、これらを利用する機会が与えられるものとし、例えば、無償教育の導入、必要な場合における財政的援助の提供のような措置をとる。*2

 

以上は第28条の一部である。高校無償化から朝鮮人学校を外すという措置は以上の(b)に反している

ツイッターなどの書き込みなどを見ると、「自分の国で」などと心ない言葉が書き散らされている。

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日本は「子どもの権利条約」」の批准国としての責務を放棄している。

先進国として肩を連ね続けたいというのなら、このような態度を改める必要があるだろう。

 

国連子どもの権利委員会からの勧告

2019年3月国連子どもの権利委員会からの勧告は、以上のことを指摘し、是正するように求めるものだ。

 

生命、生存および発達に対する権利
20.委員会は、前回の勧告(CRC/C/JPN/CO/3、パラ 42)を想起し、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。
(a) 子どもが、社会の競争的性質によって子ども時代および発達を害されることなく子ども時代を享受できることを確保するための措置をとること。

 

出生登録および国籍
23.持続可能な開発目標のターゲット 16.9 に留意しつつ、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
(a) 両親の国籍を取得できない子どもに対しても出生時に自動的に国籍を付与する目的で国籍法第 2 条(3)の適用範囲を拡大することを検討するとともに、締約国に暮らしているすべての子ども(非正規移住者の子どもを含む)が適正に登録され、かつ法律上の無国籍から保護されることを確保する目的で国籍および市民権に関わるその他の法律を見直すこと。
(b) 登録されていないすべての子ども(庇護希望者である子どもなど)が教育、保健サービスその他の社会サービスを受けられることを確保するために必要な積極的措置をとること。*3

以上のことは、全国学力状況調査の悉皆式による学習のゆがみ、高校入試、大学入試がかつてのもの以上に過酷になっていることや、朝鮮人学校を高校無償化の対象から外したことが大きな問題であることを指している。

これに対して日本はまだ何の対策も打っていない。

そればかりか、大学入試改革と銘打って過当競争を強い、さらに、経済格差、地域格差により教育が平等に行き渡らないことを、追認することになっているのである。

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過当競争により子ども時代が奪われている

今回の萩生田文科大臣の失言により、ようやくこの問題に日が当たり始めたのは歓迎すべきことである。

 

参考

中野光 小笠原毅編著 岩波ジュニア新書『ハンドブック子どもの権利条約岩波書店

 

*1:文部科学省ホームページより

*2:中野光 小笠原毅編著 岩波ジュニア新書『ハンドブック子どもの権利条約岩波書店 巻末p29

*3:https://www.nichibenren.or.jp/library/ja/kokusai/humanrights_library/treaty/data/soukatsu_ja.pdf

より抜粋